労働者派遣事業の許可申請1
最近、大変有難いことに当事務所に労働者派遣事業許可申請に関するご依頼やお問い合わせが増えておりますので、改めて平成27年9月の法改正について確認してみたいと思います。
改正のポイント
平成27年9月の改正前は、労働者派遣事業の許可申請も、それ程難しいことはなく、
- 事務所の体裁が整っているか
- 派遣元責任者など人的スタッフが配置されているか
-
資産要件を満たしているか
極端な記し方をすれば、上記3点が満たされていれば、ほぼ許可になりました。
しかし、平成27年9月以降は新たな許可基準が加えられ、許可要件が複雑になり必ず許可を得られるかどうかを確実に判断することが難しくなりました。
新たに加えられて許可要件として、「派遣労働者に係る雇用管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして次に掲げる基準に適合するものであること」とあります。具体的には下記のとおりです。
- 派遣労働者のキャリア形成支援制度を有すること
- 教育訓練等の情報を管理した資料を労働契約終了後3年間は保存していること
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無期雇用派遣労働者を労働者派遣契約の終了のみを理由として解雇できる旨の規定がないこと。また、有期雇用派遣労働者についても、労働者派遣契約の終了時に労働契約が存続している派遣労働者については、労働者派遣契約の終了のみを理由として解雇できる旨の規定がないこと
- 労働契約期間内に労働者派遣契約が終了した派遣労働者について、次の派遣先を見つけられない等、使用者の責に帰すべき事由により休業させた場合には、労働基準法第26 条に基づく手当を支払う旨の規定があること
- 派遣労働者に対して、労働安全衛生法第59 条に基づき実施が義務付けられている安全衛生教育の実施体制を整備していること
- 雇用安定措置の義務を免れることを目的とした行為を行っており、都道府県労働局から指導され、それを是正していない者ではないこと
特に、1の「キャリア形成支援制度を有すること」については、申請時に詳しく見られるようになりました。
キャリア形成支援制度とは
厚生労働省の資料には、下記のように記されています。
- 派遣労働者のキャリア形成を念頭に置いた段階的かつ体系的な教育訓練の実施計画を定め
ていること。
〇教育訓練計画の内容
① 実施する教育訓練がその雇用する全ての派遣労働者を対象としたものであること。
② 実施する教育訓練が有給かつ無償で行われるものであること。
③ 実施する教育訓練が派遣労働者のキャリアアップに資する内容のものであること。
(キャリアアップに資すると考える理由については、提出する計画に記載が必要)
④ 派遣労働者として雇用するに当たり実施する教育訓練(入職時の教育訓練)が含まれたものであること。
⑤ 無期雇用派遣労働者に対して実施する教育訓練は、長期的なキャリア形成を念頭に置いた内容のものであること。 - キャリア・コンサルティングの相談窓口を設置していること。
① 相談窓口には、担当者(キャリア・コンサルティングの知見を有する者)が配置されていること。
② 相談窓口は、雇用する全ての派遣労働者が利用できること。
③ 希望する全ての派遣労働者がキャリア・コンサルティングを受けられること。 -
キャリア形成を念頭に置いた派遣先の提供を行う手続が規定されていること。
●派遣労働者のキャリア形成を念頭に置いた派遣先の提供のための事務手引、マニュアル等が整備されていること。 - 教育訓練の時期・頻度・時間数等
① 派遣労働者全員に対して入職時の教育訓練は必須であること。キャリアの節目などの一定の期間ごとにキャリアパスに応じた研修等が用意されていること。
② 実施時間数については、フルタイムで1年以上の雇用見込みの派遣労働者一人当たり、毎年概ね8時間以上の教育訓練の機会を提供すること。
③ 派遣元事業主は上記の教育訓練計画の実施に当たって、教育訓練を適切に受講できるように就業時間等に配慮しなければならないこと。
労働者派遣事業の許可申請には、「キャリア形成支援制度に関する計画書」がありますが、その計画書については、各都県の労働局を通過した後も、本省からの問い合わせが来る場合があります。
続きはまた機会をあらためてご案内いたします。